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かる毘庵

テコンドー指導員・坪井の諸愚考を不定期に連載していきたいと思います。
2025
04,16

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2014
05,06
次なる目的地はかつて国宝だった”千鳥”松江城。
現存12天守閣の一つ。広大な縄張りが残され国宝であった事も頷ける。冷やりとする城内。急峻な階段を上がると沢山の甲冑や備前長船の刀が蔵められていた。”かすがい”を幾重にも打ち込まれた柱は強固な絆の証として縁結びに効果があるとかないとか(・ω<)やはりお城は木造でなくては。
そして最終目的地である出雲大社へ。
宍道湖岸をドライブ。立ち並ぶ風車が旅情に華を添えていた。松江城から1時間程で到着し、大きな石標を前に感慨に至る。

「すいません♪写真撮ってもらえますか?」『いいですよ』旅の笑顔の栞作りを快く引き受ける。
広大な境内。一礼して中に入る。出雲大社と言えばの大きな綱。二礼四拍一礼で今回の旅の目的を果たす。さぁこれから…「すいません♪写真撮ってもらえますか?」『いいですよ♪』快く引き受ける。…どうしようかな。境内をゆっくり散策してまわる。

昼食の時間も過ぎていたが老舗のお蕎麦屋さんを探す事にした。
観光案内所を見つけ、この辺りで一番の老舗の店を聞く。お蕎麦屋さんは古い店ばかりだそうだ。時間も時間なので昼の営業は終わっているかもとの事で幾らかお店を教えて頂いた。観光地図を手に足早にお蕎麦屋さんに向かう。
「すいません♪写真撮ってもらえますか?」『いいですよ♪』快く引き受ける。……何故だ(*´∀`)どうやら頼みやすい雰囲気の持ち主の様だ。
目的の店に到着すると既に営業終了の看板。残念だがすぐ傍にある2,3番目に古い店が開いていた。ざる蕎麦を注文。店内には芸能人の色紙が幾つも飾ってあった。出雲蕎麦に舌鼓を打ち、思い残すことなく帰路に就くことにした。

岐阜までは約6時間30分程、近い距離ではない。慌てずに帰ることにした。
段々と夕焼けから暗闇へと包まれていく。3時間程車を走らせ兵庫県加西のSAで休憩をとることにした。そういえば旧友がここに住んでいたなとイタズラ心もあって電話してみる。SAから近い所に住んでいるらしく降りてきてくださいよとの事だったので無視して通り過ぎる事にした。

……降りましたとも。コンビニで待ち合わせて近くのマクドナルドへ。
近況や今後について諸々を語り合う。日々に追われながらも家族の為に奮闘する姿が歲月の流れを感じさせる。まだ3時間は車を走らせなければならない。別れを告げ再び高速道へ。


ハンドルを握り色濃くなった暗闇の中、車の群れかき分けてただただ走り続ける。
点在する光が線をひいては流れていく、去来するものとまた同じように。

光に包まれた寺社の森厳さを思った。池のほとりで遊ぶ亀の甲羅を思った。漆黒の城を見つめた侍と自分の姿を思った。赤から青へと変わる信号の群れを思った。気さくな大将とその隣にいた女将さんの無愛想な顔を思った。兵の為に命を差し出す侍の覚悟を思った。水平線と青空の境界の彼方を思った。幾重にも重なった鳥の囀りを思った。遠く浮かんだ船の行方の先を思った。苔むした岩にそそがれる絶え間ない水の流れを思った。頭を垂れて手を合わせる人々の姿を思った。写真を撮って下さいとその楽しそうな笑顔を思った。旧友の誇らしげなほほ笑みを思った。見る事のなかった砂の丘の星空を思った。


きっと旅をする事の意味ってこういう思いにあるのだと思う。

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2014
05,05
民宿から歩いて鳥取城趾へ行く事にした。
降り注ぐ陽射しが木々の葉脈を浮かび上がらせる。鳥達の囀りがBGMだ。足早に歩く人達の中で優雅な一歩を踏み出す。

鳥取城。鳥取の飢え殺しと呼ばれる籠城戦が行われた凄惨な場所だ。生き残った城兵の半数が開城後に振る舞われた食事で胃痙攣を起こし死んだという。
兵どもが夢の跡、今や往時は想像し難いが何はともあれ合掌する事にした。城兵の命と引き替えに散った吉川経家公と記念撮影し民宿へと戻る事にした。 今日も強行軍的な予定に早々にチェックアウトをして鳥取砂丘へ。言葉通りの砂の丘。その砂が音を吸収する為か耳に木霊する風の音しか聞こえない。
眼前に広がる砂漠と描かれた風紋、どこまでも美しい水平線。碧天と潮碧に陽光の薄絹が掛けられている。ゆっくりと足を踏みだし、柔らかな大地の感覚を楽しむ。そしてBrigton-Tシャツを着て要件を満たしてのスーパーサイドキック!

姿は見えないものの鳥の囀る声がする。まさか; ・`ω・´)!と「蟲師続章」において”囀る貝”という話を見たばかりでだったので、その現象かと刹那思ったが、良く見ると鳥の足跡が至るところに残っている。きっと砂の上に僅かばかりある植物の影に潜んでいるんだろう。
 
引き寄せらる様に海に向かって歩を進めると、或る境界を境にして優しい波の音が一帯を覆っていた。その安らぎに暫く時間を忘れて佇む。

風と海と鳥。

ずっと座っていたいなと心惹かれながらも次の目的地へ向かわければならない。折角近くに来たから行ってやるか程度の気持ちで来たが、風光明媚な場所というのはそれなりの理由があるものだ。星空が美しかっただろうと昨夜来なかった事を悔やんだ。
次の目的地は島根県の国宝・神魂(かもす)神社だ。
窓から手を出して指を通り過ぎる風の感触を楽しみながら海岸を横目に車を走らせる。
到着するとアマガエル君が出迎えてくれた。可愛らしい流線型のフォルム。
苔むした石達が歴史の深さを感じさせる。室町時代まで遡る最古の大社造、そして創造の女神イザナミノミコトを祀る神社。壮大な日本神話の舞台に相応しい優しい調和の空間。イザナミの様に火で消失しなくて良かったと思った。

拍手[3回]

2014
05,02

«西へ。»


遠くへ行くことにした。


旅という程のものでもないが、そうい時があってもいいのかなと、それが理由という理由なんだと思う。

見上げれば雲ひとつ無い快晴。太陽の光がどこまでも大地を包んでいる。
芳香剤の香りの残るシャツに袖を通し、洗いたての靴と控えめなバックパックを片手に車に乗り込んだ。ホンダ製CR-V・RE4のキーをまわし、ゆっくりとアクセルを踏み込む。今日も実直な滑りだ。カーラジオからはビースティ・ボーイズの叫び声が聞こえてくる。

まずは恒例になっている奈良県の朝護院孫子寺へ向かう事にした。通い始めて7年目になる。高速を快調に走り続ける。足早に流れていく旅景に悲哀はない。7年。新鮮だった道のりも見慣れたものになり始めている。


というか……飽きちゃったかも知れない(人´∀`)…うん、きっと飽きてる。
大体の物事において新鮮さというものの代わりに愛着が湧いてくるものだ。
愛着?…うん、愛着も感じていない気がするzo(人´∀`)さぁ困ったぞと来年の事を思案しながらも孫子寺へ到着。
いつ来ても朝のお寺の空気の清々しさは心地良く、肌に馴染む滑らかさがある。
今年も毘沙門天公に挨拶を済ませ、次なる目的地は宇喜多直家が居城・岡山城へ向かう事にした。
玄人は石垣を見る!という事で縄張りを堪能。"烏城"と揶揄される漆黒の外観は壮麗だ。しかしre-buildされた城というのは如何せん味気ない。宝石の入っていない宝石箱の様なものでエレベーター完備というのが苦笑を誘う。きっと攻められた暁には侍達が大挙してこのエレベーターに殺到するに相違ない。雄叫びを上げながら△印を連打する具足姿の猛者達。
 
そして隣接する日本三名園と言われる後楽園へ。
タンチョウ鶴がお出迎え、広大な敷地には趣味の良い植物が仲良く佇んでいた。優雅に散歩する大名の姿を思う。安らぎの時間はいつの時代だって必要なのだ。

宿泊先の鳥取県の民宿に向かう。
強行軍の計画に昼食を摂る時間は含まれてはいない。車中でドーナツを頬張りながら53号線を北上する。
19時頃には宿泊先に到着。チェックイン後は鳥取砂丘へ赴くつもりだったが疲れてもいたので翌日に持ち越す事にした。テレビをつけるとボクシングの中継が行われ、一つの時代の終わりを映し出していた。
海の近くに来たからには海のものをという事で、近くの炉端焼き屋で夕餉をとる事にした。カウンターに座り店の中を見渡す。客は自分以外に一人いるだけだ。平日ともなればこんなものなんだろう。至るところにメニューの値札が貼られている。心地良い雑然がくつろいだ気分にさせてくれる。

「どこから来たんです?」ひと目で観光客と分かった様だ。
『岐阜からです』
「海のない県ですね。じゃあ是非海のもの食べていってください」
『それじゃ大将のお勧めのものを適当に見繕って下さい』
「はいよ」

年の頃は60歳を過ぎているだろう。落ち着いた物腰と柔らかな口ぶり。仕事も丁寧に行う人なのだろう。横では女将さんが黙々と洗い物をこなしている。ここでは大将が話し相手も務めている様だ。大抵の場合、どちらかが喋り、どちらかは石像の様に口をきかないものだ。

「はいよ、もさエビと言ってこの辺りでしか出回らないものです」
『ありがとう』

他にも”のどぐろ”と呼ばれる高級魚を頂いた。歯ごたえと甘さは山と川しかない県では味わえない。

『岐阜は海のものは全然駄目です、母親がいつもボヤいていますよ』
「冷凍されたものはいけません。味がまったく違います」

ある程度話すと大将は天井付近にあるテレビを見始めた。その横顔を見ると僕の存在など最初からいなかったかの様に思える。
テレビの中では”ハサミの上手な使い方について”の講釈がなされていた。解決策が示される度にへ~とか、わ~とかタレントと呼ばれる人達が驚いた表情を見せていた。僕はこの方ハサミが切れなくて困った事はないし、それを生業としている人はハサミが切れなくなる前には手入れするのではないだろうかと訝しんだが、どこかの誰かの役にたつんだろうと考えを改めた。
どうやら鉄筋コンクリート造りのお城を見てからというもの、物事に対して批判的になっているらしかった。過度に批判的になるのなんて良くない。一度自分の中で審尋してから答えを出すべきだ。
刺し身に興じながらエレベーターがどの階にいるのか、その数字の明かりを見上げている侍達を想像した。

『お仕事ですか?それとも観光で?』
「……。」大将と目が合ったまま言葉と自分との距離感を掴み損ねていた。
「あぁ、…観光です。出雲まで行こうと思ってるんですよ」
『そうですか。3時間くらいですかね、蕎麦が有名ですから蕎麦を食べるといいです。なるべく老舗がいい。美味しい所はいつまでも残っているものですよ』

時間という審査。

「確かにそうかも知れないですね、現地に行ったら聞いてみることにします」

『私も若い頃は旅に出たものです、こんな田舎から出たかったってのが理由なんですがね。でも結局ここに帰ってきた。遠くに行けば何かが待ってたり、変わるのじゃないかと思ってたんですが、いつの間にか帰りたいと願っている自分がいました。退屈で変わり映えのない生活、そこからしか得られないものがある事に気付いた。よくある話しだとは思いますが、私にとってはそれが分かっただけ良かったのかも知れませんがね』

「実際に経験したのとそうでないのとでは全く違うと思います。何も始めていないのに分かったつもりになっている人なんて大勢いますから。その事に気付きもしないし、或いは(潜在的に)目をそらそうとする」


大将は何も言わずに再びテレビを見始めた。口元に古き日の大胆さを甘受する微笑みの残滓があった。

「変わり映えのない生活からしか得られないもの」僕はその言葉をゆっくり咀嚼する様に声にだしていた。ある種の人間が口にすると重みをもつ言葉がある。

横では女将さんが顔をかえずにただ前だけを見ていた。誰かが絶賛した絵画の良さを必死に探している様な顔だった。


酔いを醒ましに夜道を歩く。夜風がいつまでも纏わりついては通り過ぎていった。

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